Column
2004年度顕彰馬選出私的予想 [2004.3.17]
年度代表馬よりこっちに選ばれるべきだろ、と言い続けてはや4年目。記者投票方法に変更があったのを機に、ちょっとまとめてみましょう。奇しくも今日はエルの誕生日ですし。
顕彰馬の記者投票方法の変更について
顕彰馬の記者投票方法が変更 >> デイリースポーツ
JRAは15日、04年度の顕彰馬選考のための記者投票実施方法を発表した。従来は抹消後1年以上を経過した馬から1人2頭までだったのが4頭に拡大。うち2頭は84年から03年3月までの約20年間、残り2頭は83年以前に抹消された馬を記入することになった。この適用は今年度のみで、05年度以降は前年3月までの20年間に抹消された馬から2頭投票する。選出基準は従来通り、有効投票者数の4分の3以上。今年度の結果発表は4月末の予定。
プレスリリース:本年度 顕彰馬選考のための記者投票の実施について >> JRA
今年度投票の概要
- 本年、JRAが行っている中央競馬50周年事業の一環として、抹消後長い年月を経ている馬についての見直しを行うことを主眼に、「投票できる頭数を4頭まで」といたします。
なお、4頭の内訳につきましては、*従来は、抹消後1年以上の馬(遡っての期限は設定せず)を2頭まで投票していただきました。
- 2頭は昭和58年12月31日以前に抹消された馬を記入
- 残りの2頭は昨年3月末日から遡り20年間に抹消された馬を記入(昭和59(1984)年1月1日~平成15年3月31日までの期間)できることといたします。
- この投票において「4分の3以上」の得票(有効投票者数の4分の3)を得た馬を、顕彰馬に選出いたします。
*「4分の3以上」という基準につきましては従来通りです。- 4頭まで投票できるのは今年度のみとし、平成17年以降の投票につきましては、投票できる馬を、投票実施前年の3月末から遡って20年の間に抹消された馬2頭までに限定して実施いたします。
- 記者投票スケジュール(予定)
- 3月中 投票委嘱者(約160名)に対し、投票用紙及び参考資料を送付
- ~4月18日 投票受付
- 4月末 結果発表
参考:顕彰馬の選考について(JRA規定)
顕彰馬の選考は、顕彰馬選考委員会において、下記の基準を満たす馬を対象に行ないます。
- 競走成績が特に優秀であると認められる馬。
G1競走に格付けされた重賞競走において原則として3勝以上の成績を収めたもの。 - 競走成績が優秀であって、種牡馬または繁殖牝馬として、その産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬。
前記1.に準ずる成績を収めた馬であって、G1競走において優勝した産駒が種牡馬にあっては5頭以上、繁殖牝馬にあっては2頭以上のもの。 - その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬。
国際的に活躍し、中央競馬の評価を高めたもの又は記録性、話題性、大衆性において中央競馬の発展に特に貢献のあったもの
1.3.については、原則として前年度に日本中央競馬会の馬名登録を抹消した馬とします。
顕彰馬選考委員会ではこれらの馬について調査・審議したうえで、委員の3/4以上の賛成を得てはじめて顕彰馬が決定されます。
予想候補
ここでは1983年以降の馬に絞ってみます。G1 3勝馬はけっこういますので、他の基準も満たした馬だけをリストアップしました(要するにエルだけなんだが)。
- テイエムオペラオー 26戦14勝 →基準1
- ○:G1 7勝。重賞8連勝の年間グランドスラム達成の金字塔。10億円ホース。
- ×:取りこぼしの多さ。
- アグネスデジタル 32戦12勝 →基準1
- ○:G1 6勝。芝ダート中央地方海外問わずの実績。G1 4連勝。
- ×:取りこぼしの多さ。
- エルコンドルパサー 11戦8勝 →基準1、3
- ○:G1 3勝。海外含む生涯連対パーフェクト。抜群の海外評価。クラシフィケーション日本馬歴代一位。
- ×:G1 3勝という数字自体は平凡。
- メジロドーベル 21戦10勝 →基準1
- ○:G1 5勝。牝馬戦限定では7-2-1-0。
- ×:牡馬相手では苦戦。
- スペシャルウィーク 17戦10勝 →基準1
- ○:G1 4勝。従来の選出馬と同等の実績(旧八大競走におけるG1 4勝)。10億円ホース。
- ×:同期対決でグラスワンダーに二戦二敗、エルコンドルパサーに一戦一敗。
- グラスワンダー 16戦9勝 →基準1
- ○:G1 4勝。従来の選出馬と同等の実績。
- ×:安定性にやや欠ける。
- ベガ 9戦4勝 →基準2
- ○:自身はG1 2勝。産駒3頭が重賞ウィナー、G1 6勝。
- ×:競走成績は歴代の牝馬に比べ特に秀でていない(牡馬相手では苦戦)。
- マヤノトップガン 21戦8勝 →基準1
- ○:G1 4勝。従来の選出馬と同等の実績(旧八大競走におけるG1 4勝)。
- ×:過去選考外となる。理由は安定性の問題。
- ホクトベガ →基準1
- ○:G1 4勝。交流重賞10連勝の金字塔、重賞13勝は歴代最多。
- ×:過去選考外となる。理由は安定性の問題と、G1勝利の多くが交流重賞であることか。
雑感。
何はさておいても、テイエムオペラオー。外野が「弱メン相手」だのほざいたところで、G1を7勝&グランドスラムは大変な偉業です。問題はその他7頭ですね。エルコンドルパサーとアグネスデジタルがやや抜けて、あとは横並びかと思いますが・・・。今回の改正の最大のポイントは83年を境に選出候補を2頭ずつとしたことです。
この83年を境としている根拠ですが、過去20年という節目が理由と思われますが、1984年は所謂グレード制の導入でもあります。距離体系の整備や牝馬重賞の拡充、ダート格付け向上、地方交流競走などでG1そのものの数が大幅に増加しています。また外国産馬に関しては条件付ながらG1への出走制限がなくなりました。基準1にあたる「G1を3勝」というハードルを越える馬は珍しくなくなりつつあり、現役を含めれば1984年以降だけで32頭(うち顕彰馬8頭)もいますし、ネオユニヴァース、デュランダルあたりがすぐにも続きそうです。
参考:グレード制導入以降のG1 3勝馬(顕彰馬、上記掲載馬は除く)
馬名 | 主なタイトル | 備考 |
ニホンピロウィナー | 安田記念、マイルCS2回 | |
---|---|---|
ミホシンザン | 皐月賞、菊花賞、天皇賞(春) | |
スーパークリーク | 菊花賞、天皇賞(春、秋) | |
イナリワン | 天皇賞(春)、宝塚記念、有馬記念 | |
ライスシャワー | 菊花賞、天皇賞(春)2回 | |
ミホノブルボン | 朝日杯、皐月賞、ダービー | |
ヤマニンゼファー | 安田記念2回、天皇賞(秋) | |
ニシノフラワー | 阪神3歳牝馬S、桜花賞、スプリンターズS | |
ビワハヤヒデ | 菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念 | |
ファレノプシス | 桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯 | |
マンハッタンカフェ | 菊花賞、有馬記念、天皇賞(春) | |
テイエムオーシャン | 阪神3歳牝馬S、桜花賞、秋華賞 | |
(シンボリクリスエス) | 天皇賞(秋)2回、有馬記念2回 | |
(ゴールドアリュール) | ジャパンダートダービー、東京大賞典、フェブラリーS | |
(ヒシミラクル) | 菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念 | |
(スティルインラブ) | 牝馬三冠 | |
(アドマイヤドン) | 朝日杯、JBCクラシック2回、南部杯、フェブラリーS |
馬名 | 主なタイトル | 備考 |
デュランダル | スプリンターズS、マイルCS(2回) | |
---|---|---|
ゼンノロブロイ | 天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念 | |
タイムパラドックス | JCD、川崎記念、帝王賞、JBCC(2回) | |
(スイープトウショウ) | 秋華賞、エリザベス女王杯、宝塚記念 | |
(カネヒキリ) | JDD、ダービーGP、JCD、フェブラリーS | |
(ディープインパクト) | 三冠、天皇賞春、宝塚記念、ジャパンカップ | |
(ダイワメジャー) | 皐月賞、天皇賞秋、マイルCS |
結論
今回の改正でもここ数年の候補馬目白押し状況の改善には何の約にも立たないんですよね。オペラオー以外(ひょとしたらオペラオーもか?)は票が分散し、3/4以上の票獲得には至らないような悪寒があります。せめて83年以降で3頭、それ以前で1頭とできなかったのでしょうか。そもそも、この期に及んで83年以前で3/4以上の記者投票を得られるような候補がどれだけ存在するのでしょうか(元祖怪物タケシバオーや、勝利数と連勝数歴代一位のダイナナホウシュウくらい?)。
今後もG1 3勝以上の馬はますます増え毎年のように登場してくるでしょう。大事なことは選出数を調整することで価値を維持するのではなく、永きに渡って統一的な基準を設け、それを遵守することだと思います。長期観測が必要な基準2はともかく、年度ごとの選出数を制限する意味がどれだけあるのでしょう。結果として競走実績を正しく評価できない矛盾をずっと抱え続けることになるわけですから、理解に苦しみます。何度でも言います。いいじゃないですか、顕彰馬が何頭いたって。そうでなければ1998年あたりからG1勝利数の目安を5勝くらいに引き上げるしかないのでは(決して賛成はできませんが)。
ちなみに、馬以上に人間のほうがさらに問題な気がするんですよねぇ・・・現役はさておいたとしても、死んだ人じゃないと選考対象にならないんでしょうか。サル河内や柴田政人なんか騎手実績だけで十分殿堂入りだと思うんですけど。
余談:過去の選出馬の傾向と比較
- 三冠馬
- セントライト、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、メジロラモーヌが該当。スティルインラブは当確?
- 重賞9勝以上
- オグリキャップ、シンボリルドルフ 、メジロマックイーン 、ナリタブライアン。唯一の例外はヒシアマゾン(G1 2勝どまり)。スペシャルウィークとテイエムオペラオーは当確?
- 10億円ホース
- ナリタブライアン、メジロマックイーン。但しステイゴールドは除外(海外賞金を引くと8億円)。スペシャルウィークとテイエムオペラオーは当確?
- G1 5勝以上
- シンボリルドルフ、シンザン、ナリタブライアンが該当。テイエムオペラオー、アグネスデジタル、メジロドーベル、アドマイヤドンば当確?
2006-12-05追記
生涯勝率が5割を切っていると負けすぎ、と判断されるのかもしれませんね。