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Legend of Generation 1995───唯一の古馬G1完全制覇世代

兼ねてから近年最強世代の呼び声が高い、1995年生まれのサラブレッドたち。クラシック出走年から98世代とも言われるが、クラシックと無縁だったエルコンドルパサーファンということもあって俺は95世代と呼んでいる。こんなもの正直好き嫌いの範疇を超えるものでもないし自分の目にどう映ったかが重要なのだけど、たまにはベタなデータ比較もいいかもしれない。

※データは随時更新しますが、チェック漏れで初稿時点(2006/10)のものもありますのでご了承下さい。

獲得G1

三冠路線の世代限定G1は当然除外するとして、5歳(2000年)の時点で存在した12の古馬混走G1をすべて制しているのはグレード制導入以降この世代だけだ。牡馬に比べ牝馬の印象が薄かったにも関わらず、きっちりファレノプシスがエリザベス女王杯を制している。

国内古馬G1勝利
フェブラリーステークスウイングアロー[2000]
高松宮記念キングヘイロー[2000]
天皇賞・春スペシャルウィーク[1999]
安田記念エアジハード[1999]
宝塚記念グラスワンダー[1999]
天皇賞・秋スペシャルウィーク[1999]
エリザベス女王杯ファレノプシス[2000]
マイルチャンピオンシップエアジハード[1999]
ジャパンカップダートウイングアロー[2000]
ジャパンカップエルコンドルパサー[1998]、スペシャルウィーク[1999]
スプリンターズステークスマイネルラヴ[1998]
有馬記念グラスワンダー[1998]、グラスワンダー[1999]

驚くことに地方交流G1もすべて勝っている。さすがに6歳(2000年)の時点で設立されたJBCは条件が厳しいため未勝利である。

交流G1勝利
川崎記念インテリパワー[2000]
帝王賞マキバスナイパー[2001]
南部杯ニホンピロジュピタ[1999]
東京大賞典ワールドクリーク[1999]

さらに海外G1も3勝している。

海外G1勝利
サンクルー大賞(仏)エルコンドルパサー[1999]
ジュライカップ(英)アグネスワールド[2000]
アベイドロンシャン賞(仏)アグネスワールド[1999]

G1クラスで死角が存在しない唯一の世代、それが95年世代である。さらに平地だけではなく障害ですら例外ではない。もっともカラジは日本馬ではないが、11歳でのG1制覇は今後破られることはないだろう。いや来年も来日を予定しているとのことで、自身で記録更新の可能性はあるか。

※本当に自身で10~12歳でのG1三連覇という偉業を達成してしまった。さて2008年はどうするのか。

障害G1勝利
中山グランドジャンプカラジ[2005-2007]
中山大障害ランドパワー[2000]

生涯成績

生涯勝率が5割を越えていたG1馬は例年はせいぜい1頭か2頭だが、95年世代はなんと5頭もいる。エアジハード以外はみな中長距離路線でこの戦績は、いかに取りこぼしが少なかったかを物語っている。

生涯成績5割以上のG1馬
馬名戦績勝率(連対率)
エルコンドルパサー11戦8勝.727(1.000)
グラスワンダー15戦9勝.600(.666)
スペシャルウィーク17戦10勝.588(.824)
エアジハード12戦7勝.583(.750)
セイウンスカイ13戦7勝.538(.615)

種牡馬成績

95年世代の産駒は今年で3期目だが、すでにクラシックを3勝。さらに海外G1も2勝しているのはいかにも国際的に活躍した世代らしい。

種牡馬成績(G1勝ち)
馬名産駒名G1勝利
スペシャルウィークシーザリオオークス[2005]、アメリカンオークス[2005]
グランドスラム*カフェオリンポスジャパンダートダービー[2005]
キングヘイローカワカミプリンセスオークス[2006]、秋華賞[2006]
アグネスワールドWonderful World*コーフィールドギニー[2006]
エルコンドルパサーソングオブウインド菊花賞[2006]
エルコンドルパサーアロンダイトジャパンカップダート[2006]
グラスワンダーマルカラスカル中山大障害[2006]
エルコンドルパサーヴァーミリアン川崎記念[2007]
ディヴァインライトNatagora*チェヴァリーパークS[2007]
種牡馬成績(上記を除く重賞勝ち)
馬名産駒名重賞勝利
マイネルラヴコスモフォーチュン北九州記念[2006]
マイネルラヴマイネルハーティーニュージーランドトロフィー[2005]
マイネルラヴコスモヴァレンチ小倉2歳ステークス[2004]
ミラクルアドマイヤカンパニー京阪杯[2005]、大阪杯[2006]

繁殖牝馬成績

牝馬勢は競走成績こそ平凡に終わった馬がほとんどだが、母としての仕事はそれなりにこなしている。

繁殖牝馬成績(G1勝ち)
母名産駒名G1勝利
ロンドンブリッジダイワエルシエーロオークス[2004]
エアデジャヴーエアメサイア秋華賞[2005]
ファーザフリオーソ全日本2歳優駿[2006]
スカーレットレディヴァーミリアン川崎記念[2007]
アドマイヤサンデートールポピー阪神ジュブナイルフィリーズ[2007]

参考データ:3歳が勝った重賞(3歳上)

3歳上の重賞で3歳時に古馬を撃破&4歳時に3歳世代を完封」というのは世代レベルを示す重要な条件のひとつ。今回はG1を5ポイント、G2を3ポイント、G3を1ポイントとして各世代の獲得ポイントを計算してみた。強い世代の目安は20ptあたりか?

※重賞数に違いがあるので、古い世代のほうが不利なのはあらかじめご承知を。

1986年[20pt] ダイナガリバー世代 他の代表馬:メジロラモーヌ/メジロデュレン/ニッポーテイオー

牝馬東タイ杯はエリ女の前身。上の世代にはシリウスシンボリ、ミホシンザン、サクラユタカオーなど。

1987年[10pt] メリーナイス世代 他の代表馬:サクラスターオー/タマモクロス

3歳馬がJCを制したのは初(外国馬ではあるが)。

1988年[22pt] サクラチヨノオー世代 他の代表馬:オグリキャップ/スーパークリーク/サッカーボーイ

立ちはだかるタマモクロス、最後にオグリキャップが引導を渡す。

1989年[2pt] ウィナーズサークル世代 他の代表馬:オサイチジョージ/ロジータ

ほんとうに目立つところがない。南関でロジータが大暴れした程度。

1990年[4pt] アイネスフウジン世代 他の代表馬:メジロ*3/ダイイチルビー/ダイタクヘリオス

古馬になってからのメジロの印象が強いので、字面の数字ほど弱い世代という感じはない。

1991年[7pt] トウカイテイオー世代 他の代表馬:ヤマニンゼファー/フジヤマケンザン/ツインターボ

あっとおどろくダイユウサクの年。

1992年[13pt] ミホノブルボン世代 他の代表馬:ライスシャワー/サクラバクシンオー/シンコウラブリィ

リアルシャダイがノーザンテーストをリーディングサイヤーから引き摺り下ろす。個性派が多かった。

1993年[5pt] ウイニングチケット世代 他の代表馬:ビワハヤヒデ/ノースフライト/ホクトベガ

トニービンがクラシックを席巻。牡馬牝馬ともに粒揃いで古馬になっての活躍も目立ち主観では相当強い世代と思っているのだが、この基準ではまったく目立てず。

1994年[21pt] ナリタブライアン世代 他の代表馬:サクラローレル/ヒシアマゾン

文字通りブライアンズタイムといえる。

1995年[16pt] タヤスツヨシ世代 他の代表馬:マヤノトップガン/マーベラスサンデー/ダンスパートナー

SSが大暴れ開始。フジキセキを欠いたのが惜しまれる。

1996年[18pt] フサイチコンコルド世代 他の代表馬:バブルガムフェロー/エアグルーヴ/ファビラスラフイン

バブルガムフェローが4強対決を制したくらいしか目立つところなし。

1997年[36pt] サニーブライアン世代 他の代表馬:タイキシャトル/サイレンススズカ/メジロドーベル

この年の下克上ラッシュはちょっと異常である。3歳の強さと4歳上の脆さがかみ合わないとなかなかここまではならないはずなのだが・・・。

1998年[24pt] スペシャルウィーク世代 他の代表馬:エルコンドルパサー/グラスワンダー/セイウンスカイ

その「強い4歳」相手に24ptを叩き叩き出す。

1999年[6pt] アドマイヤベガ世代 他の代表馬:テイエムオペラオー/ナリタトップロード/メイショウドトウ

この世代の真価は古馬になって発揮される。

2000年[8pt] アグネスフライト世代 他の代表馬:アグネスデジタル/タップダンスシチー/エイシンプレストン

遅咲きで実力馬に外国産が多いため弱い世代の代名詞のように揶揄されることが多い。

2001年[23pt] ジャングルポケット世代 他の代表馬:マンハッタンカフェ/クロフネ/アグネスタキオン

アグネスタキオンの戦線離脱がなければさらに荒稼ぎした可能性があった。

2002年[20pt] タニノギムレット世代 他の代表馬:シンボリクリスエス/ヒシミラクル/アドマイヤドン

異能の才が多かった。

2003年[19pt] ネオユニヴァース世代 他の代表馬:ゼンノロブロイ/ヘヴンリーロマンス/ブルーコンコルド

ポイントは稼いでいるもののクラシックシーズンの印象は地味。

2004年[8pt] キングカメハメハ世代 他の代表馬:ハーツクライ/スイープトウショウ/アジュディミツオー

クラシックを戦った馬が次々と故障。

2005年[10pt] ディープインパクト世代 他の代表馬:カネヒキリ/ラインクラフト/ヴァーミリアン

ディープの印象が強すぎるものの、ダート路線は稀に見るハイレベルな世代。

2006年[24pt] メイショウサムソン世代 他の代表馬:アロンダイト/カワカミプリンセス*/アドマイヤムーン

エリザベス女王杯はカワカミプリンセスが1位入線の12着降着。

古馬勢がディープ以外は比較的手薄だったことがわかる。

2007年[14pt] ウオッカ世代 他の代表馬:ダイワスカーレット/アストンマーチャン

ウオッカが東京優駿に輝き古馬G1を制したのもダイワスカーレットとアストンマーチャンと、稀に見る牝馬上位世代である。

総括

1995年世代は全体の層が厚くかつトップ3は歴代最強レベルにあり、特にサラブレッドの充実期とされる4歳時、王道路線で他の世代に付け入る隙を与えなかった。2000年のテイエムオペラオーの年間グランドスラムも、エルコンドルパサーとスペシャルウィークが現役を続行していたら(&グラスワンダーが往年の力を発揮できていたら)どうなっていたかわからない。もっとも、それゆえファンどうしの争いは今も事欠かないわけだが・・・。