Column

[2004-02-22] あの頃競馬板があったら─────

国内走ってた頃は競馬板どころか2ちゃんもなかったわけで(ダビスク掲示板とか競馬カフェとかが盛り上がってた・・・そういや時計仕掛けのオレンジっておったな)、海外情報はSporting LifeとかParis Turfをつたない語学力でシコシコ和訳してた。その甲斐あってアクセスはメチャクチャ増えたけど(凱旋門賞のときとかトップだけで1日1万アクセスもあったわ)、競馬板あったら情報収集ぜんぜん楽だったろうなぁ(´Д⊂。まあ、うちの掲示板がアンチに荒らされまくった気がしなくもないけど。というわけで、今週はいいところもなかったのでちょと引退当時を回顧してみます。

人は物事を自分の都合のいいように解釈するものだ

まずわかってほしいこと。エルコンドルパサーの欧州キャンペーンは極めてリスクの高い試みだったこと。これまで長期滞在した挑戦者たちで結果を出したのはハクチカラのみ。JRA所属馬の海外遠征に対する補助金制度は60日間を超える滞在に関しては適用されず、何もかもが渡邊オーナーの自己資金によるものだった。結果だけ見れば遠征直後に18億円というシンジケートが組まれたのだから、そのくらいの持ち出しは問題ないように思える。しかし遠征で惨敗したりすればセリでの産駒の価格に大きな影響を与えるのは明白であるし、早期にシンジケートが解散することも十分あり得る。もちろん国内に専念すればあと数億円の賞金上積みはほぼ間違いなかったし、そもそもエルが欧州の馬場をクリアできるかどうかすら未知数だった(実際、イスパーン賞の結果次第で、恥を偲んで遠征中止も関係者間で考えられていた)。リスクを恐れずに目標に向かって挑戦した姿勢こそが、チームエルコンドルパサーの素晴らしさだと思う。

消化不良が生んだ綻び

凱旋門賞後オーナーは「一流馬には一流の使い方がある」と欧州を例に出して早期引退を決めたけど、「国内でラストランを」の声は多かった。確かに早すぎる「勝負付けは済んだ」発言があったり、死闘の共演者モンジューが出走するJCでの引退式などでチキン呼ばわりする人も当時からいた。そりゃオレだってブリーダーズカップ参戦はしてほしかったけど、オーナーの信念があったからこそエルは誕生し、そしてあの活躍があったわけだから、そのオーナーの決断が自分の思惑とは違ったからって馬主批判するのは子供の言いがかりみたいなもんだなあと思った。あと、よせばいいのに故・大川慶次郎が「今日のJCに出てたら5馬身前を・・・」とかわけのわからないこと言っちゃうし。それは勝った馬に失礼極まりないよ。そんなこと言ったら「去年のJCにスズカが出てたら2馬身半前を」とかだって言えるじゃん。どうもフジは客観性を欠いて視聴者の感情逆撫でするようなことを平気で言うことがえてして多い(F1の中継でもセナ贔屓が強すぎて不愉快極まりなかった)。こうしてあれだけ興奮した凱旋門賞だったのに、エル包囲網が徐々に生まれていく。

問題のJRA賞

そして有馬記念。運命のクビの上げ下げで勝ち馬はグラスとなったけど、勝ち負けを超えたものがみんなの心に残ったと思う。毎年のことながら、春よりも秋のほうが印象は大きい。ましてエルは年内国内未出走。目の前で応援できた馬と、モニタ越しで馬券も買えない馬とでは思い入れも違ってくるのだろう。99年の年度代表馬はグラスかスペか、あれ、エルも候補なのか。表は割れまくり、ギリギリのところでエルに結果が決まると果たして競馬コミュニティは大騒ぎに。一部のスペファンサイトはJRAに抗議の書面を送っていた。二ノ宮サイトの管理人のところにもスペファンとおぼしき人から「何を考えてるですか!」「辞退すべきです!」というメールがきたらしい。漏れのところには「負けないで下さい」というメールが。何にだろう。グラスワンダー関連サイトは現役続行だからか意外とおとなしかった(00年宝塚前後はえらいことになってたが)。ギャロップあたりでもかなり興奮した投書が相次いでいた(エル擁護派はほとんどなかったらしく、某関係者から「何か言ってやってくれ」とお願いされたけど、何を言っても聞く耳持ちそうに無いのでお断わりしました)。

うちの掲示板は煽りの書き込みがちょっとだけあったけど全員スルーしてて、むしろクラシフィケーションのPはポンドなのかポイントなのかで盛り上がってたのであんまり代表馬の話題にはなってなかった。もらえるものはもらっておきましょう、以上って感じで。個人的には代表馬はスペでエルは特別賞かなと思ったけど、あの3頭の中のどれかだったら別にいいやと思った。どちらかというとカルチェ賞(欧州代表馬)をデイラミに持ってかれたほうが残念で、でもデイラミの戦績考えたら納得もいってた。あ、そうか。スペ側としては当然もらえると思ってたから納得いかずに騒いでたのかな。

もうひとつ、スペにもグラスにも凱旋門賞参戦プランがあったことも忘れてはいけないポイント。国内に専念することで金字塔を打ち立てたオペラオーの例もありますから一概に海外遠征を神聖化するつもりはありませんが、最強馬の決着をつける舞台がロンシャンだったら、とんでもなくエキサイティングでファンタスティックなことだと思いませんか?。

騒ぎとは無縁だった当事者たち

白井センセがエルが選出について「グラスならまだわかる」と発言したのもスペファンに火をつけることになったんだと思う。でも恐らくその発言には馬主の臼田氏に対するポーズが含まれているわけで(渡邊氏や二ノ宮センセの前で同じ発言できるか?)。渡邊氏はニューイングランドとか白井センセに預けてたし、氏の父喜八郎氏もスペ産駒持ってるし(母スカボロフェアって・・・こっちにエルつけて「アスニカケルハシ」とか「フユノサンポミチ」とか名づけてほしい気もする)、臼田氏だって現在トラッドスキーム持ってるし、リキッドノーツに至っては二ノ宮センセに預けてるわけで、関係者どうしは特にお互いどうと思ってるわけでもなさそうで。馬は馬主のものってことをよくわかってない一部のファンが、好き勝手ほざいてたなぁという感じだった。うちの常連がうちで騒ぐ分には構わないんだけど、他のサイトや関係者に対して暴れるのは筋違いでしょ、常連さんたちはそのへんわかってくれてて特に荒れたりしなかった(それを誘った書き込みがあって、それがきっかけでスペファンサイトの管理人と仲良くなったりしたんだが)。結論:3強に加えエアジハードまでゲットした社台ファームのひとり勝ち。

ほんとにその馬のことが好きなら、賞をもらったもらえなかったとか、どの馬より強い弱いとか、そういうこと関係なく好きでいられるし、応援できるんじゃないかと思うんですけどねぇ。10月の凱旋門賞であれだけ盛りあがってたのに、たった3ヶ月でヒールにされちゃたまりませんよ。選出方法に関して周知徹底されてなかったことが原因なんだからさあ、馬とか関係者をどうこうっておかしいってば(そもそもビリーヴを牡馬だと思ってるような連中が選んでるんだから、代表馬なんてたいした価値ないってば)。

余談だけどオレは代表馬よりも顕彰馬制度のほうがよっぽどおかしいと思う。格を落としたくないために選出方法変えることでかえって存在価値そのものが疑わしくなってることに気づけよ、JRA。千歩譲ってもオペラオーが選ばれないのはおかしいだろが。別にいいじゃん、ふさわしければ何頭選出したって。

追記、3月15日、顕彰馬選出の記者投票方法に変更がありました。しかし問題はまったく改善されてません。何を考えてるんでしょうかJRAは。これも別のコラムでまとめてます。

熱冷めて、エルは天へ

お約束のように最強馬論争が起こったけど、あんまり興味なかった。エルは(最高だけど)条件問わず高いレベルで安定した力を出せる馬であって最強とは思ってなかったし。その頃から競馬に対する熱が一気に冷めちゃって、妹のメモリーズオブユーが引退したことで更新する気も消えちゃったのであります。まさか引退してたった3年でこの世から去ってしまうとは。後悔先に立たずという言葉がこれほど胸に突き刺さったことはなかったです。

産駒がぜんぜん走らなくたって、どこぞのバカにヘタレ呼ばわれされたって構わないから、生きているだけでよかったですよ。オレは愛するエルの応援のために借金までしてフランスにいったです。かつてのライバル、スペやグラスファンの応援スレとかを見るにつけ、「おまいら2ちゃんにカキコしてるだけじゃなく生きてるうちにちゃんと会いにいけよ」と言いたくなります。