Column
ヴァーミリアンといく地球の歩き方───ヴァーはヴァーでもインヴァソール編
次元が違った。だからどうした。
3月29日 出発
エアはキャッセイパシフィック、香港で乗り継いで現地入り。当然エコノミーだけど、なぜか香港からビジネスクラスになってたので超快適。ひょっとしてこれが誕生日クオリティなのか?到着が夜だったのでこの日はそのままホテルで過ごす。現地の宿、アラビアンパークホテルは郊外にポツンと立っていた。格安ツアーなのでたいしたことないだろうとタカを括っていたけど部屋は広いしキレイだし、ジュメイラ(ビーチ)あたりより競馬場に近いし、当たりだったかも。
TVをつけるとさっそくワールドカップの枠順抽選の様子が。ただ、2強はもとよりカンディデイトの調教まで流れていたにもかかわらずヴァーミリアンはスルーでちょっとガッカリ。もっとも何を言ってるのかさっぱりわからなかったけど。
ホテルのラウンジにあった現地の一般紙にも記事が載っていたので持ち帰ることにする。
3月30日 下見
誕生日である。おめでとう、オレ。36歳だYO('A`)
2年前にできたホテルらしく地図に載っていないので(Google Mapで見ると建設中だった)、着いてはみたものの正確な場所がわからない。ただホテル近くのWAFIというショッピングモールまでバスが出ているようだ。そこまでバスで向かい、タクシーを拾うことにした。WAFIからナドアルシバまでは直線で約10kmほど。タクシーに乗ること約15分、やってきたよついに!
ナドアルシバ競馬場
・・・落ち着いて見てみると意外と小さい。スタンドがゴール前後の部分にしかないせいなんだろうな。前日の午後というのにまだあちこちで設営作業をやっている。こんな調子で本番間に合うのかなあ。
文句言われたら謝ればいいやとそこらじゅうを練り歩く。当然、コースにも出る。ダートコースは明らかに砂ではなく土である。地面を触ると乾燥し切っていて硬いのなんの!これならヴァーミリアンが追い切りで33秒台出したのもわかるわ。というかこの状態でレースやったらちょっと脚元弱い馬はすぐパンクするんじゃないの?実際にはレースの前にトラクターみたいのが馬場を耕す(そうとしか言いようが無い)ので多少はクッションが効くのだろうけど、地盤そのものの硬さは変わるわけじゃない。実際にこの目でこの手で確かめることで、ダート専用馬を連れてきても勝てないという説は恐らく正しいのだろう、そう思えた。芝は日本のそれとたいして違わないような感じに見えた。
ゴドルフィンギャラリー
ひとしきり下見を済ませた後、併設されているゴドルフィンギャラリーに立ち寄る。ゴドルフィンのG1勝ち馬の展示がズラリと並ぶ中、予想通りドバイミレニアムは別格扱いで、ライフサイズの像が飾られていた。そのほかプロモーション映像を流すミニホールもありお昼寝にちょうどよい(というかスクリーン見てるうちに勝手に落ちた)。
インターナショナルステーブル
時間はたっぷりあるので、スタンドから見えた厩舎っぽい建物まで歩いてみることにした。もし入れたらラッキーだし、入れなくても外から様子を伺えるかもしれない。途中、ゴルフコース(ナドアルシバは競馬&ゴルフクラブである)の入り口のところからマイルの発走地点に立ち寄れた。
いざ行ってみるとミレニアムステーブルだのオアシスステーブルだの、ひとつではなくいくつも厩舎が存在した。怒られるまで行ってみよう、といいつつも勝手に柵を乗り越えたりするわけじゃない。そんなことしたら我々だけでなく関係者にも迷惑がかかってしまう。外からチラチラ様子を見るだけなのでイマイチどれが本命なのかわからなかったが、最も奥地に、間違いなくそれと確信できる厩舎を発見。
国旗並んでるし(日本は一番奥)。そもそも名前がインターナショナルステーブルときたもんだ。有料の厩舎見学ツアーに申し込めば入れるのかもしれないけど、「日本から(わざわざ)きました」でなんとか入れないかな・・・普通にダメだった。そらそうだろ。この中のどこかにヴァーミリアンがいるんだろう、「がんばれ超がんばれ」と念だけは送っておいた。
ずいぶん遠くまできたため歩いて戻るのがしんどい。そこへ通りがかった1台の車。白人のオバチャンが威勢よく声をかける。「Hey! Going to Race Cource ?」「Yes」「OK , Comon !」マジっすか!とまあ、渡りに船。これも誕生日クオリティなのか?
3月31日 当日
開場は14時。余裕を持ってホテルをお昼過ぎに出ることにした。途中、渋滞に巻き込まれ「間に合うのか?」と心配したら、ナドアルシバへの分岐で交通規制をやっていた。チケットを見せるとすんなり通過、あとはスイスイ。現地に着いたのは13時くらいだろうか。それなりに待っている人はいるようだが日本人の姿は少ない。昼間の日差しは強く、日陰を探すと日本人発見。ドバイは初めてだけどレース写真は撮りなれているようで、ともに観戦することに(→ TURF DREAMSの晋氏)。なお同行したゆたかさんによると、G1の開門待ちでよく見かけた顔だったとか。日本の競馬ファンは世界一と思う(何が)。
レープロは相当数あるようで、最初は配布所に何度か並びなおしてゲットしようと思ったけど、ゴッソリ持ってく現地人も特にお咎めはないようなので、堂々と10部くらい持ち帰る。ただ帰国後数えたら7部しかなかった・・・観戦中ほかの客に盗られたっぽいけど、帰り際でもたくさん余ってたし、これで日本人の評判を落とすようなことには恐らくなるまい(ピュア
ナドアルシバ 0R 開門ダッシュステークス(G1)
そんなのやりませんよ。というか整理入場だし。ペットボトルの水を持っていたけど、持ち込み禁止だったのを思い出してその場で飲み干す(これが後で問題になる)。入場は8つのゲートに分かれていて、持っているチケットによって入り口が異なる。インターナショナルビレッジのゲート(GATE7/GATE8)はゴール前から最も遠い地点だけど、だから何か不利になるようなことも特になし。グッズショップでみやげを買い、観戦ポイントの確保に向かう途中川崎記念でお会いした出資者の方と再開した。この瞬間、オレのテンションに火が入ったみたいだ。
前日の下見でも確認したが、ゴール前は非常にこじんまりとしていて、パドックとコースが隣り合わせ。ただこのあたりはラチの手前に植え込みがあり、普通に撮ろうとするとちょいと邪魔。足場になりそうな柱があったのでこれに乗って撮るのを前提とするのがよさそう。仕込みは完了、あとはレースを待つのみ。
ナドアルシバ 1R よくわからん ダ2000m
試し撮りのレースの予定が、直前ものすごい勢いでおなかが急降下。トイレに篭ってるうちにレースがはじまってしまった。なんとかゆたかさんに場所をキープしてもらっておいたけど、この後一度離れたら二度と空きそうもない。腹を決めた。脱糞上等。
ダートコースの様子
レースの前後、馬場をトラクターがならしていた。同時に散水も。さすがに馬場を歩くわけにはいかないので想像でしかないけど、硬いけど粘っこい、そんな馬場なのかもしれない(だから単純なスピードだけでなくパワーも要求されるのかな)。
ナドアルシバ 2R ゴドルフィンマイル ダ1600m
ヴァーミリアン以外は眼中になかったけど、撮るだけ撮ろうかな。ほかにめぼしい馬もいないしフサイチリシャールを追いかけてみる。おいおい、アクビしてる場合か。そもそも追い切りで一瞬のうちにダイワメジャーにちぎられたのでここは苦しいかな。それでも直線は予想以上に粘っていた。このレース以降、日没。ナイター競馬での撮影は未経験。
ナドアルシバ 3R UAEダービー ダ1800m
ヴィクトリーテツニーには悪いけど、ここはアジアティックボーイの勝ちっぷりに注目といったところか。現地でも人気のようで、あちこちから「ボーイ!ボーイ!」という声が。結果は期待通りの圧勝、ただ最後大外からヴィクトリーテツニーがすっ飛んできたのは驚いた。前評判は低くてもそれなりに勝負になる馬をちゃんと連れてくるんだから森師はほんとすごい。
ナドアルシバ 4R ドバイゴールデンシャヒーン ダ1200m
前言撤回、日本馬見せ場なし。写真もどこを撮ったらいいのか悩んでるうちにレースが終わってしまった。連れてくるならアグネスワールドみたいなタイプが面白そう。
オープニングセレモニー
4Rが終わってからゴール前に特設のスクリーンみたいなものを設置していて、ああ、この後3RはG1だからかなと思ったら、いきなり場内の灯りが消えて・・・花火は上がるわ、馬上サーカスみたいなのははじまるわ、なんかターフビジョンの上を人が飛んでるわ(これにはすげー笑った)、えらい嗜好の凝ったアトラクション。G1 3連戦に向けいやおうなしにテンションは高まります、はい。
ナドアルシバ 5R ドバイシーマクラシック 芝2400m
さてレースも日本馬もここからが本番、と意気込んだものの、ポップロックは後方からちょいと差しただけで終わってしまった。レース前からかなり入れ込んでるっぽかった。それが敗因かどうかはわからないけど。京都記念のレートはあれでよかったのかよーとか思いつつ次へ。
ナドアルシバ 6R ドバイデューティーフリー 芝1777m
ダイワメジャーは先に馬場入りしたのか、返し馬で確認できず。アドマイヤムーンを適当に撮る。レースでは直線入ってすぐムーンの手応えのよさがわかった。こりゃ楽勝だなー、京都記念のレートは正しかったんだなー、エンドスイープもいい後継馬ができたなー、エルっ仔も負けてられないぞー、日本馬ひとつでも勝ててよかったなー、あれダイワメジャーもいいとこきてるじゃんー、なんてことが頭を駆け巡る。馬上インタビューに答えるユタカはともかく、こんな嬉しそうな近藤オーナーは見たこと無い。これはこれで微笑ましいな。
日本馬が勝ったことでオレも周りの観客から握手を求められる。悪い気はしないしガッツポーズはして見せたけど、オレの本命は、ムーンじゃないんだよ。
ナドアルシバ 7R ドバイワールドカップ ダ2000m
おとなりのシリア人の家族連れ、子供の興味はディスクリートキャット。パパはインヴァソール、ママはプレミアムタップを連呼している。後ろのソマリア人は「ここは日本馬は出番ないよ」どうやらそんなことを言いたいらしい。黙れ。返事の代わりに叫んだ。
「約束どおりオレは来たぞ!」
この場所にヴァーミリアンの姿があることの意味も、さっきの叫びが誰に対してのものなのかもあんたらにはわからないことだし、わかってほしいとも思わない。だから今からレースが終わるまでの間、オレの邪魔をしないでくれ。
オレはディスクリートキャットも好きで観察ページなんてものも作ってるのだけど、このときばかりはヴァーミリアン以外はまったく視野にはいらなかった。ヴァーミリアンの一挙一動だけを見ていた。レース直前、先ほどの出資者の方より「逃げもある」という情報をもらう。まさか8年前の再現?いやいや。「でもたぶんネコが行くんじゃないかな」オレもヴァーミリアンが行くことにはならないと思う。とにかくヴァーミリアンのレースをしてくれたらそれでいい。パドックのヴァーミリアンはちょっとテンションが高そうだけど入れ込んでるという感じでもない。3週ほどで鐘が鳴り、ルメールを背にした姿を見て思わず震えた。そしてコースへ。ちょうど目の前で向きを変え返し馬に入る。大丈夫、落ち着いてる。このまま無事にレースがスタートしてくれ。
しかし。プレミアムタップがゲート入りを嫌い、先に入ったヴァーミリアンはカリカリしはじめてしまった。「落ち着け、大丈夫だから落ち着け」そう口にしたオレを察するかのように、何度もヴァーミリアンを撫でるルメール。あんたが鞍上でよかったよ。
レースはあっという間に終わってしまった。ヴァーミリアンは追走に手一杯で4コーナーではもう追い通し、他馬との手応えの違いを見て「もはやこれまで、このまま失速か」と惨敗を覚悟した。後からわかったが、2000年のドバイミレニアム以来となる2分を切る決着。勝ったインヴァソール、食い下がったプレミアムタップは本当に強い。冒頭でも触れたとおりちょっと次元が違う。今の日本馬では何を連れて行っても彼らの前を走ることはできないのではないか。大きく離された3着にブリッシュラック。初ダートでこのメンバー相手なら大健闘だろう。2強の一角、ディスクリートキャットはゲートの出も悪く、まったくいいところなしに殿負け。実力負けでないのは確かだけど、順調にレースを使えない体質的な何か弱みがあるのだろう。
ゴールする前から涙が止まらず写真はぐだぐだになってしまった。着順掲示板の一番下に表示された「2」。ナドアルシバの長い直線をヴァーミリアンは最後までしっかり走り切り4着でゴールを駆け抜けた。
さ、撤収しましょ。
ナドアルシバ 8R 閉門ダッシュステークス
行きはよいよい、帰りは地獄。郊外で車だけが交通手段のため、タクシー待ちは軽く3時間を越えた。結局ホテルにたどり着いたのは午前1時。豪華商品もよいが、こういう部分の改善に本腰を入れてくれないと、社交イベントとして問題ではないかと思う。
4月1日
to be continue ...
コメント
ルメールのコメント。
Christophe Lemaire - Vermilion - “He has run very well. The dirt surface here is very different from Japan and when the others quickened he couldn’t go with them but he galloped on very well. To be absolutely realistic he is probably just a little bit below the calibre of the horses that finished in front of him.”
重ね重ね、あんたが鞍上でよかった。感謝してるよ。
雑記
- 我々は有料エリアのインターナショナルビレッジのチケットをオフィシャルサイトで事前購入しておいた。当日売りはしていないという噂だが確認はできなかった。一般入場エリアはスタンドの一部と1コーナーの芝生のあたりだけなので、パドックやゴール前でまともに観戦するなら必須。なお有料エリアは基本的にドレスコードがあるが、よほどズボラな格好でない限り問題なし。ジャケットにチノパン程度で十分。逆にスーツで臨むなら徹底的にキメるのもよし。また飲み物の持ち込み禁止となっていたけど、隣で観戦していたシリア人の家族連れは堂々とポットでコーヒーを持ち込んでいた(ごちそうになったけど超苦かった)。お国柄か入場時にX線の荷物検査があるので、フィルムで撮る人は要注意。
- パドックとコース両方の写真を撮るのは(ひとりでは)たぶん無理。距離は目と鼻だけど移動できそうもなかった。
- タクシーは安く、10kmあまりの道のりを都合6回乗ったが、平均30~35Dh(ディルハム)。日本円にすると1500円くらい。現地でも馴染みのイベントなのか、行き先は日本語発音の「などあるしば」でちゃんと通じる(たぶん)。
- 現地で日本円の両替は厳しい。あらかじめUSドルにしておけば、まともなホテルであればフロントでディルハムに両替してもらえるはず。レートは自分で調べてくれ。カードはほぼどこでも使えるっぽい。カード主体ならUSドルに両替しとく現金は2万円くらいで十分と思う。
- 渡航中幾度と無く「Japan ? China ?」と尋ねられ、「Japanase」と答えると「OK , Japan Good , China No Good」みたいな返事が。連中はいったいどこで何をやらかしてるんだ。
- 岐阜は笠松の近辺からいらっしゃったおふたりさん、またお会いできたらよいですね。
- シリア人ファミリーご一行にDWCロゴ入りボールペンを頂いた。お返しに「Japanese 2000 Ginie Runner」モチのポストカードをバラ撒いてきた。ちゃんと「Mochi」と発音させてきた。
- トイレの場所が悪い。パドックの近くにない。
- 道路に段差が多い。わざとかも。
- なんでも来年か再来年、世界一の高さのビル「トップオブドバイ」ができるらしい。高さはまだ非公開で500mとも1000m!とも。
日本馬の可能性
あの馬場はパワーもそれなりに要求されそうな感じ。だからたぶん単なるスピード馬じゃ通用しない。DWC制覇の可能性を感じる存在は、ぱさぱさ的には当然エルコンドルパサーなのだけど、スピードがあって、なおかつ開催末の荒れた馬場を苦にしないタイプってのかな・・・メジロマックイーン、ミホノブルボン、グリーングラス。近年だとタップダンスシチーじゃないかな。父は今年の2着馬と同じだから適性はあると思うし、スピードに任せた逃げよりも行けるだけ行ってバテてからのタフさ勝負もドバイに向いてそうだし。現役だとちょっと浮かばない。
アロンダイト
うーん・・・能力や適性以前にあれだけ地盤が硬いとアロンダイトには酷じゃないかと思う。エルっ仔だと、意外とトウカイトリックなんか面白いかもしれない。
新競馬場
なんでも2010年目標に新しい競馬複合施設を検討中のようですが、馬場やコースがどうなるこうなるよりも帰りのタクシー待ち地獄の解決を激しく要求する(ピュア